薬学生就活前に知っておきたい!薬学生が選ぶ研究職というキャリア
薬学生の就職できる選択肢はたくさんあります。特に企業薬剤師については、複数の選択肢がありますので、今回は「研究職」をご紹介します。

研究職の概要(医薬品開発における位置づけ)
製薬会社における研究職は、主に「新薬の種を見つけること」「人での臨床試験に進めるかを見極めること」のように医薬品開発の初期段階を担います。
一つの新薬が誕生するまでに9~17年と言われていますが、研究職と言われる範囲は、主に以下のプロセスです。
■基礎研究(創薬研究):2~3年
新薬の候補となる物質を探し出す段階です。化学合成やバイオテクノロジーを用いて新しい化合物を生み出すことや、植物や動物由来の成分から有効性を持つ成分を選定(スクリーニング)します。
■開発研究(非臨床試験):3~5年
基礎研究で選ばれた候補について、動物や細胞を用いて、薬効薬理、毒性(安全性)、薬物動態を試験し、人への試験(臨床試験)に進めるかを判断します。
製品ごとの研究職の違い
薬学の知識を活かせる研究職は製薬業界以外にもありますが、法規制や目的に大きな違いがあります。
| 項目 | 医薬品の研究職 | 化粧品の研究職 | 健康食品の研究職 |
| 目的 | 疾病の治療・診断・予防 | 美化、清潔、肌や毛髪の健やかに保つこと | 健康の維持・増進、栄養補給 |
| 規制 | 薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)など、非常に厳格。承認に際し、有効性・安全性の厳密な証明が必要。 | 薬機法(主に配合成分や使用目的に関する規制) | 食品に関する法規制(食品衛生法など)が中心。医薬品のような効果効能は標榜できない。 |
| 開発 | 作用機序の解明や毒性・安全性の厳密な評価に重点が置かれる。 | 使い心地、安全性、美容効果、安定性、配合技術に重点が置かれる。 | 機能性成分の探索や加工技術、安全性に重点が置かれる。 |
■化粧品の場合
治験は行いませんが、化粧品の場合も安全性や有用性(効果)を確認するために、ボランティアの協力のもとでヒトを対象とした試験が広く行われます。この場合、「治験」ではなく「ヒト試験」や「モニター試験」などと呼ばれます。
■健康食品の場合
健康食品やサプリメントは、病気の治療を目的としていないため、治験は義務付けられていませんが、「特定保健用食品(トクホ)」や「機能性表示食品」のように、特定の保健の目的が期待できる旨を表示する場合には、その機能性の科学的根拠を示すためにヒトを対象とした臨床試験や研究レビュー(既存論文の総合評価)が必要となります。
薬学生から研究職になるために

■6年制薬学部卒業後の進路
大学院(修士課程・博士課程)への進学が一般的です。製薬会社の研究職の多くは、応募資格として大学院修士課程以上の学歴を求められることが多いです。
6年制の薬学部(薬学科)を卒業した場合、薬剤師免許の取得が前提となりますが、研究者としての基礎教育(卒業研究など)は受けています。さらに高度な研究を目指す場合は、博士課程(4年間)に進むことで研究者になれる可能性が高まります。
ただし、6年制薬学部を卒業した段階でも十分に採用基準に達していると見なされれば、合格の可能性もあります。
■研究内容と就職活動への影響
専門分野について
修士の学生に専門性はさほど求められていないとする意見もあり、大学での研究内容が企業の仕事にそのまま活かされることは少ないのが実情です。入社後に新たな研究テーマを担当することが多いです。
採用で重要視されること
企業が重視するのは、研究のテーマや内容が希望する製薬企業の研究内容と合致していることではなく、研究活動を通じて培われた研究そのものに対する能力や姿勢です。
特に、論理的な思考力、課題解決能力、探求心、粘り強さ、PDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)を意識して研究を進めてきたか、などが評価されます。
自分の研究の意義や将来展望を理解し、創意工夫しながら取り組んだ経験は大きなアピールポイントになります。さらに英語力も重要となります。海外論文を読む機会も多いため、英語力があることは就活でも有利になる要素です。
どのような人が向いているか
■探究心や好奇心がある
新しい治療法やメカニズムを解明するために、知的好奇心が尽きないことが、研究の原動力となります。
■忍耐力がある
新たな有効成分を見つけることや人に投与する治験の段階まで進むことが出来る機会はとても珍しく、多くの失敗と試行錯誤が伴います。失敗を恐れず、目標達成まで諦めない粘り強さがなければやり抜くことが出来ません。
■論理的思考力ができる
実験結果を客観的に分析し、次の実験につなげる論理的な仮説を立て、検証するサイクル(PDCA)を回した経験があることが必須です。
■情報処理能力が高い
大量の最新論文やデータを読み解き、必要な情報を整理・抽出する能力(情報検索・読解力)は必須です。
■コミュニケーション能力がある
黙々と作業をするわけではなく、研究はチームや他部門、時には海外の研究者とも連携して進めます。自分の考えやデータを分かりやすく伝え、議論する力が求められるため、コミュニケーション力が必要不可欠です。
研究職と開発職の違い
| 項目 | 研究職(リサーチ) | 開発職(デベロップメント) |
| 段階 | 基礎研究 → 非臨床試験(動物・細胞レベル) | 臨床試験(治験) → 承認申請 → 製造販売後調査 |
| 目的 | 新薬のタネ(候補化合物)を発見・創出し、人への試験に進める科学的根拠を確立する。 | 人での有効性と安全性を証明し、国の承認(製造販売承認)を得る。 |
| 業務 | 化合物合成、作用機序の解明、毒性・薬物動態試験の実施、データ解析。 | 治験の計画・管理(プロトコール作成、モニタリング、データ収集・解析)、当局との折衝。 |
| 知識 | 薬学、化学、生物学、生化学、毒性学など、広範なサイエンスの知識。 | 薬機法、GCP(治験の基準)、臨床医学、統計学、プロジェクトマネジメントのスキル。 |
外資系企業と内資系企業での研究職の違い
| 項目 | 外資系企業(日本法人) | 内資系企業 |
| 研究
テーマ |
グローバル戦略に基づき、世界の研究拠点との連携や役割分担が明確。テーマが絞り込まれていることが多い。 | 自社内で広範な研究領域を持ち、独自の判断で研究を進める余地が大きい。 |
| キャリア | ジョブ型採用が多く、異動が少ない傾向。キャリアアップには海外本社や他拠点への異動が伴うこともある。 | メンバーシップ型採用が多く、研究テーマや所属部門が異動により変わる可能性がある。 |
| 英語の頻度 | 非常に高い。日々の業務、会議、資料、論文などで英語が必須となる。 | 社内では日本語が基本だが、論文や学会発表、国際共同研究などで英語力が求められる。 |
| スピード感 | 意思決定が早く、研究のスピード感を重視する傾向がある。 | 慎重に検討を重ねる文化があり、長期的な視点で研究を進める傾向がある。 |
キャリアがどのように上がっていくのか

研究職として新卒で入社した場合、キャリアは大きく二つの道に分かれて進んでいきます。多くの場合、新卒で入社した後は、まず研究者としての実力をつけ、その後、本人の志向や適性に応じてマネジメントの機会が与えられていきます。
■専門職としてのキャリア(スペシャリスト)
入社後は、特定の研究テーマを担当し、専門分野の深掘りを行います。
主任研究員 → 上級研究員 →主席研究員(フェロー)といった形で昇進し、その分野のスペシャリストとして、高度な専門性と技術で会社を支えます。
学会発表や論文発表を通じて、社外にも認められる研究者となることを目指します。
■管理職としてのキャリア(マネジメント)
研究の経験を積み、グループリーダー →部長 → 役員といった管理職の道に進みます。
研究プロジェクト全体の計画立案・推進、予算管理、人材育成など、研究組織のマネジメントを担い、経営的な視点で創薬戦略を決定する役割を果たします。
転職で研究職にキャリアチェンジ
結論から言うと、不可能ではないですが、現実的には非常に難しいです。薬学生の皆さんが研究職を目指すのであれば、大学院に進学し、新卒で目指すのが最も王道かつ現実的なルートであると理解しておきましょう。
<厳しい理由>
■専門性の壁
製薬会社の研究職は、大学院で培った高度な専門知識と、それに裏打ちされた実験スキルが前提となります。特に新卒採用は修士・博士が中心であり、他の職種で数年働いた後にキャリアチェンジするには、その専門性を埋めるのが困難です。
■即戦力要求
転職市場では、企業は即戦力を求めます。未経験からの研究職採用は、よほど特殊な専門スキルや資格がない限り、ほとんどありません。
<可能性のあるケース>
■大学院への再入学
一度社会に出た後、博士課程などに再入学し、専門的な研究実績を積んでから、改めて研究職として就職活動をするケースはあります。
■他の職種からの内部異動
MRや開発職、学術職などの関連職種で製薬会社に入社し、社内公募制度などを利用して研究部門へ異動する道は、外部からの転職よりも可能性が高まります。
■CRO/CMOなど研究支援企業での経験
医薬品開発業務受託機関(CRO)や医薬品製造受託機関(CMO)などで、研究に近い技術的な経験を積んだ後、製薬会社の研究部門に転職するケースも一部存在します。