薬学生就活前に知っておきたい!薬学生が選ぶ学術・DIというキャリア
薬学生の就職できる選択肢はたくさんあります。特に企業薬剤師については、複数の選択肢がありますので、今回は「学術・DI」をご紹介します。

学術・DI(Drug Information)業務とは
■仕事内容
学術(またはDI)業務とは、自社製品(医薬品)に関する最新かつ正確な科学的・専門的な情報を、医師、薬剤師などの医療従事者や社内のMR(医薬情報担当者)などに提供・管理し、医薬品の適正使用を推進する業務です。具体的には、医薬品情報のプロとして、主に以下の4つの役割を担います。
- 情報収集・管理
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)などの規制、医学・薬学の最新論文、文献、国内外の安全性情報などを収集し、製品情報(添付文書など)や関連資料を作成・管理します。 - 情報提供
収集・管理した情報を、社内のMRや医療従事者に対して、講演会や資料、リーフレットなどを通じて迅速かつ正確に提供します。 - 問い合わせ対応
医師、薬剤師などの医療従事者からの、自社製品に関する有効性・安全性・適正使用などに関する専門的な問い合わせに対応します。 - MRの支援
MRが医療現場で説明するための専門性の高い学術資料を作成し、MRからの質問に回答したりして、営業活動を学術的にサポートします。
■やりがい
- 医療の最前線への貢献
迅速かつ的確に提供した情報が、患者さんの症状改善や治療の成功に直結するため、「医療現場を支えている」ということが大きなやりがいとなります。 - 専門性の追求
医薬品に関するあらゆる情報のプロとして、常に新しい知識を吸収し、専門性を高められることに魅力を感じられます。 - 情報の窓口としての責任感
正確な情報を提供し、医薬品の安全性を守る役割を担うことに、大きな責任感を感じます。
■会社でのポジション
- 他部門の支援
社内のMRやマーケティング部門と密接に連携し、医療現場で活動するための学術的な根拠とツールを提供します。 - 外部との窓口
製薬会社の窓口として、医療従事者からの問い合わせに対応するため、会社の信頼を左右する重要な役割です。
■適性がある人
情報収集や管理が好き、コミュニケーション能力が高い、相手の意図をくみ取ることができる、説明力がある、継続的な向上心がある、臨機応変に対応ができる、マルチタスクの管理能力がある、考えを文章に表現ができる人に適性があります。

製薬企業内と委託先での学術・DI業務の違い
| 項目 | 製薬企業の学術・DI職 | 外部委託先のDI職 |
| 管轄範囲 | 自社製品全般の学術戦略、情報作成、医療従事者からの問い合わせ、MR支援。 | 特定の製薬会社から委託された製品の問い合わせ対応(コールセンター業務が中心)。 |
| 役割 | 情報の戦略的な企画・作成、高度な問い合わせへの回答、社内教育、法規制対応。 | 問い合わせ受付、定型的な回答、情報記録。 |
| 業務内容 | 講演会資料の企画・作成、添付文書の改訂、海外論文の調査、高度なQ&A作成、社内MRへの研修、DI問い合わせ対応。 | DI問い合わせ対応(電話、メール)、問い合わせ内容の記録とエスカレーション。 |
| 専門性 | 自社製品に関する高度な専門知識と、医学・薬学全体への深い理解が求められる。 | コミュニケーションスキルと、迅速かつ正確な対応力が求められる。 |
大手企業と中小企業での業務内容の違い
■大手企業
- 専門的な分野に特化
- 業務効率のため、担当業務が細分化される傾向(例:DI担当、学術資料作成担当、安全性情報担当など、学術部門の中でも担当が分かれます)
- グローバルな連携
特に外資系企業など海外本社や海外子会社との連携が多く、英語力やグローバルな規制対応知識が求められる機会が多くなります。
■中小企業
- 兼任の可能性が高い
1人当たりの担当業務の範囲が広く、学術・DIだけでなく、薬事や安全性情報など複数の業務を兼任する可能性があります。 - 幅広い経験
多岐にわたる業務を経験できるため、幅広い知識と柔軟な対応力が身に付きます。 - 経営層との距離
経営層との距離が近く、より早い段階で製品の戦略に関する意思決定に関わる機会が得られる可能性があります。
大学の時に経験しておくと良いこと、就職活動で役立つこと
■必須となる知識・スキル
- 情報検索・読解力
論文や文献から必要な情報を迅速かつ正確に検索・読解し、論理的にまとめる経験があると良いです。英語論文を読む機会も多いため、英語力は大きな武器になります。普段から論理的に物事を考える習慣を身につけておきましょう。 - コミュニケーション能力
アルバイトやサークルなど学生の時に力を入れた活動の中で、様々な人と協調し、意見を調整する役割を担った経験があると良いです。
新卒で就くメリット、転職で就くメリット

■新卒
- 学術知識の体系的な習得
自社製品に関する深い知識と、DI業務のプロセスを体系的に学ぶことができます。 - 情報加工能力の向上
医療現場で役立つようにわかりやすく情報をまとめるスキルを徹底的に鍛えることが出来ます。 - キャリアパスの幅が広がる
MRやマーケティング、薬事など、他部門への異動を含めた将来的なキャリアパスの幅が広がります。
■転職
- 即戦力として活躍
病院・薬局での薬剤師経験や他業界での情報管理・コールセンター経験などが、即戦力として活かされやすいが、現実的には業務を受託している企業への転職が選択肢となります。 - 専門性の高いポジション
前職が製薬企業であれば臨床開発部門での経験、英語力を活かし、マネジメント層やグローバルDIなど、より専門性の高いポジションでの採用の可能性があります。
学術・DI職の1日の業務の流れ
特に製薬企業での学術職の業務は多岐にわたり、学会参加など出張が伴うケースもありますので、下記は1例として記載しています。
| 時間帯 | 業務内容 | 備考 |
| 8:30 | 始業、メールチェック、法規制情報の収集 | 最新の安全性情報、業界動向などを確認。 |
| 9:30 | DI問い合わせ対応(電話・メール) | 医療従事者からの問い合わせに対し、文献検索や社内情報確認を行い、迅速に回答。 |
| 12:00 | 昼食・休憩 | - |
| 13:00 | 問い合わせ内容の深度調査・文書化 | 即答が難しかった高度な問い合わせについて、関連部署と連携し、エビデンスを元に回答を導き、記録に残す。 |
| 15:00 | MR研修資料の作成・確認 | 新製品や重要な副作用情報に関するMR向けの研修資料を作成・レビュー。 |
| 17:00 | 学術資料のレビュー | MRが使用するプロモーション資料やWebサイトの情報が、正確で公平な表現になっているか薬機法遵守の観点から審査・承認。 |
| 18:00 | 終業 | 必要に応じて残業、翌日の準備。 |
学術・DI業務特有の大変さ
- 誤情報を提供してしまうことのプレッシャー
誤った情報提供が患者さんの命に関わる可能性があるため、情報の一つ一つに最大限の注意を払う必要があり、精神的なプレッシャーが大きい。 - 迅速性と正確性の両立
医療現場のニーズに応えるため、迅速かつ的確な回答が常に求められる。 - 知識習得に終わりがない
医薬品情報は日々更新されるため、継続的に学習し、知識をアップデートし続ける必要がある。 - 相手の意図をくみ取ることの難しさ
問い合わせをしてきた相手が本当に知りたいことや困っている状況を、コミュニケーションを通じて把握し、適切な情報を提供する必要がある。
学術職のキャリアパス
DI・学術職として製薬企業に入社をした後は下記の選択肢が広がります。
■マネジメントへの昇進
DIセンター長、学術部門の部長など、部門全体の情報戦略・品質保証を統括する管理職への道があります。
■社内異動の具体的な例
- MR(医薬情報担当者)
学術知識を活かして、より高度な対応を行う現場のMRに転身。 - メディカル・アフェアーズ
科学的なコミュニケーション戦略の立案や専門家と学術的な関係構築を行う職種に異動。 - 薬事
添付文書改訂などの経験を活かし、承認申請や法規制対応を専門とする職種へ異動。 - 安全性情報(PV)
副作用症例の評価・報告の経験を活かし、専門的な部門へ異動。